ポイントシステム復活〜学校生活のバックアップのために
昇平が一人だけで自転車通学を初めて一週間が過ぎた。事故に遭うことも迷子になることも遅刻することもなく、片道三十分近い道のりをこいで登下校している。
そんなのはできて当たり前だ、と人には言われるかもしれない。でも、昇平にとっては、とても大きな課題だった。とうとうそれができるようになったね、あの昇平が、ちゃんと毎日自転車で学校に通っているんだ、すごいよね、と家族中で感心して喜んでいる。
ところで、そんな中、先週は一日だけ自家用車で昇平を学校まで送った。雨になるという予報だったのだが、はたして、予報通り昼前から雨が降り出した。暖かい日が続いていたのに、珍しく冷たい雨で、肌寒さに暖房が恋しくなるようだった。
すると、午後3時半、昇平が学校の公衆電話から電話をかけてきた。
「終わったから迎えに来て」
おや? 確かに授業は終わったかもしれないけれど、今日は確か部活動があったはず。
「部活はどうしたの?」
と聞くと、
「行くのはやめにした」
あ〜のなぁぁ〜……!(怒)
部活は行かなくちゃダメなの! H先生に、出なくてもかまわないと言われた、とか何とかごちゃごちゃ言っているので、一喝した。
「何か用事があるときには部活動に出なくていいこともあるけれどね、基本的に、何もない日にはちゃんと部活をやってくるの! 部活動に出てから電話をかけてきなさい! ちゃんと迎えに行ってあげるから!」
昇平、電話口で少し怒っていたけれど、「わかったよ」としぶしぶ電話を切った。
部活動の終了時刻は5時半だったけれど、なんとか5時までは参加してまた電話をかけてきたので、今度は迎えに行った。
☆彡☆彡☆彡☆彡
昇平は、部活動だけでなく、家での勉強にも文句を言うようになってきた。……いや、今までだってけっこう文句を言いながらやっていたのだけれど、それは難しいとか量が多いとか、そういうことについての文句だった。ところが、中学生になってからは、「パソコンやゲームの時間がなくなるから」というのが主な理由になってきたのだ。
中学生は授業も毎日しっかりあるし、部活動をしてくれば、さらに帰宅時間は遅くなる。まともに部活をすれば、帰宅する頃にはもう夕飯の時間。夕飯前のゲーム時間がなくなる! 宿題や家庭学習をやっていると、もっと遊ぶ時間が減る! というわけだ。
なんとかしなくちゃなぁ、と考えていたところに、この電話だったので、本気で考えた。さて、どうしようか。
――うん、久しぶりにポイントシステムの復活だ。
ポイントシステムが何か、ということに関しては、ホームページに載せてある
「ペアレント・トレーニング」を見ていただくこととして……。(笑)
昇平にこう持ちかけた。
「部活や勉強をすると、パソコンやゲームの時間が減るから嫌なんでしょう? それじゃ、こうしよう。部活をちゃんと5時半までやってきたら1ポイント、宿題をしたら1ポイント、チャレンジなんかの家庭学習をしたらまた1ポイント。そうやってポイントをためていって、週末の土日にポイント分だけパソコンの時間を増やすってのはどう? もちろん、パソコンじゃなくてゲーム時間に使ってもいいけど」
「どのくらいの時間?」
と聞かれたので、あわてて計算した。1週間フルにポイントをためると、月曜日から金曜日までで15ポイント、でも、昇平の入ったパソコン部は、基本的に金曜日は休みだと聞いているので、14ポイント……ふむ。12ポイントくらい稼ぐと見越して、1ポイント20分にすれば、合計4時間。それを土日に割り振って、1日2時間延長。
実際には、春休み以降、昇平のパソコンやゲームの時間はずるずると長くなってきていて、平日でも、約束の時間より長めになってきていた。これを一度、約束の時間に戻して、改めてポイント分だけ延長すると、時間を守ることにもなって良さそうだな。
これだけのことを計算するのに、約5分。
「それじゃ、1ポイント20分でどう? きちんとやることをやると、土日に4時間以上延長になるけど」
本当のことを言えば、休みの日にはこのくらいの時間は余計にパソコンやゲームをしていたのだけれど、それについては知らん顔していた。
昇平は、少し考えて、提案を受けた。
「うん、それならいいよ」
自分が今やっている週末の過ごし方を、きちんと保証してもらえる、と感じたのかもしれない。平日できない分のパソコンの時間を週末にまとめてもらえるわけだから、本人にも納得がいったのだろう。
今のところ、ポイントシステムはうまく行っているようだ。
ポイントは、本人の希望で、クリスタルのようなプラスチックの玉にして、壜の中にためている。土曜日にさっそく4個使って1時間20分延長した、今日は残りの2個を使うつもりらしい。(今週は途中から始めたので、6ポイントしかたまっていない)
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遅刻せずに自分で学校へ行くこと。そこで勉強すること。運動すること。友だちと関わること。部活動に参加すること。学校行事に参加すること……。学校生活から学ぶことは本当に多い。
昇平自身も中学校生活にとても大きな希望を持っている。『中学生になって』という作文にはこう書いたらしい。
「中学1年生になって、とても嬉しかった。中学校でやりたいことは授業です。特に数学、国語、英語、理科、歴史、地理がやりたい授業です。他にもいろいろあり、たくさんの授業がとても楽しみです。これから、みんなと友だちになって、仲よくしたい。」
もちろん、これから勉強の難しさとか、現実の大変さには突き当たるに決まっているけれど、それでも、今のこの気持ちをずっと持ち続けて欲しいと思っている。そのためには、上に書いたような中学生としての基本態度をしっかり身につけるのが大事だろうな、と。
私は昇平に勉強は教えない。わからないところを聞かれたら教える程度のことはするけれど、自分から昇平の「先生」になって教えるつもりはない。勉強を学ぶ場所は学校。勉強を教える人は教師。私は母親。昇平が学校生活がスムーズに過ごせるためのバックアップが、自分の役目なんだと思っている。
子どもに関わる人たちが、それぞれの役目をはたして、子どもの成長を支援していくこと。それが「連携」ってものの本当の姿じゃないかな、とも考えている。
[08/04/27(日) 10:02] 家庭