昇平てくてく日記2

小学校高学年編

この一週間・2〜日−火曜日:運動会〜

 日曜日は、昇平の小学校の運動会。ところが天気予報では降水確率がものすごく高い。心配しながら朝を待っていたら、未明に雨が上がって、6時に花火がなりました。お弁当を作って、旦那と一緒に応援へ。ところが、朝8時頃になって空から雨が落ち始めました。どうにか持って、降らないで、と祈る中、降り始める小雨。それでも、開会式前に昇平たち5年生の鼓笛パレードができました。 「鼓笛練習」シリーズでがんばってきた鍵盤ハーモニカを、いよいよ発表したわけです。
 ちゃんとできていました! 鼓笛通帳で練習してきたおかげで、演奏はもうばっちり。そうすると、他のことへの余力が出るんですね。一緒に行進するとか、移動するといったことが苦手なはずの昇平が、「とにかく、前の人についていくように」というドウ子先生の指示で、きっちり行進していきます。演奏しながらの隊形移動も、周りの子を見ながら、ちゃんとできている。「わー、ちゃんとできてる! すごい!」と旦那と感激しながら観ていました。
 けれども、その直後から雨は本降りになり、やがて土砂降りの大雨に。児童席の上にテントを張ったり、と対応はしていたものの、これは今日はとても無理、ということで、運動会は急きょ火曜日の午前中に延期になりました。残念でしたが、鼓笛だけでも旦那に見てもらえたのは良かったです。昇平は本当にがんばっていましたので。

   ☆★☆★☆★☆

 翌月曜日は日曜日の代休で昇平は家にいました。ときどき雨の降る天気だったので、昇平は一日家でおとなしく過ごしていましたが、延期になった運動会が気になるのか、ときどきちょっぴり不安定になっていました。あまり気にしないように、普通に過ごさせました。私自身は、それ以外にも町内会に役員の会合など、あれこれ。

   ☆★☆★☆★☆

 火曜日には雨も上がり、いよいよ運動会。日曜日のプログラムを、構成し直して午前中でやってしまおう、ということで、ものすごくハイペースな進行になりました。
 まず最初に、学年順に徒競走を一気に行いました。前にスタートした子たちがゴールする前に次の子たちが走り出すので、高学年になると、ときどき前の子たちが次のスタートに迫ってくることがあって、そのたびにあわてて「次の人たち、どいてどいて! 後ろから来てるよ!」とコースを明けさせていて……競技の行方とはまた別の意味で、はらはらどきどきの運動会になりました。(笑) 
 徒競走の次は、団体競技を一気に。紅白対抗の競技なので、応援合戦が盛り上がっていました。次が個人のチャンス走。低学年のダンス。ここで、昇平たち5年生はまた鼓笛パレードを披露しました。昇平自身は、このあたりではもう疲れて集中力が切れてきていて、ときどき演奏を休んでしまっているのが見えましたが、それでも最後の最後まで、皆と一緒にがんばってやりとげました。いや、本当にえらかったなぁ、とつくづく感じました。

 昇平は走るのが苦手です。いつもビリ。これは私に似てしまったので、しかたないですね。(苦笑) でも、どの競技でも、一生懸命参加していました。
 180m走では、彼がゴールする頃にはもう他の子はみんなとっくにゴールしていて、どこがゴールラインかもわからない状態になっていたので、昇平はスタート地点で立ち止まりそうになっていました。(校庭のトラックが1周160mくらいしかないので、本当はあと20mくらい走らなくてはならなかった) ゴールにいた先生方が「もう少しだよ! こっちこっち!」と呼んでくれるけれど、昇平はとまどった顔で迷ってしまっている。すると、先生方が指示を出して、すかさずゴールラインにまた白テープが。とたんに、昇平はそこがゴールだと分かって、またまっすぐに走っていきました。結局、ひとり大きく遅れたおかげで、ゴールテープを切ることができた昇平でした。(笑)
 でも、先生方のすばやいその対応を見たとき、「ああ、対応のポイントをしっかりわかってくれているんだなぁ」と思って、すごく感激しました。百聞は一見にしかず、じゃないけれど、昇平の場合は、本当にことばで伝えるより、目で見てわかりやすく示してあげるのが、一番わかりやすいんですよね。

 団体競技では騎馬戦に参加しました。三人の男の子たちが下で馬を作り、その上にひとりが乗って、紅白でぶつかり合い、相手をつぶしたほうが勝ち、というもの。昇平は馬の左側で、上にのった子の片足を支えていましたが、見ていたら、なんと最後の最後まで勝負が決まりません。何分間戦い続けたでしょう? 2分? 3分? 昇平は白組でしたが、赤組の敵とずっともみ合い、ぶつかり合い続けていました。その間、昇平もずっと上の子の足を支え続けていました。ときどき、力尽きそうになって、上の子の足が伸びるのが見えるけれど、それをまた必死でこらえて支えている。結局、時間切れで勝負がつかず、昇平のチームは引き分けになりましたが、最後の最後までみんなと一緒に上の子を支え続けていた姿に、胸が熱くなりました。鼓笛といい、この騎馬戦といい、昇平は今年、本当にみんなの一員として参加していました。

 勝敗の行方は、一番最後の紅白対抗リレーに持ち越され、昇平たちの白組が紅組を追い上げていく大接戦。結局、高学年の女子リレーで白が紅を抜き、高学年の男子リレーで逃げ切って白組が勝ちました。去年の運動会では、自分の組(やはり白組)が負けた、というので腹をたて、まったく無関係な通りすがりの紅組の女の子をパンチしてしまう、という事件を起こした昇平だったので、今年の反応はとても気になっていたのですが、白組がめでたく勝って、その心配もなくなりました。
 まあ、今年は最初にSST絵カードを使って、負けても八つ当たりしないことなど確認はしていたので、例え負けても、もう去年のようなことは起こらなかったと思いますが、それでも、「勝った」経験をさせてあげられたのは良かったと思います。
 ……昇平はこれまで、自分の組が勝った経験をしたことがなかったのです。低学年の頃は、自分が紅や白のチームに所属している、ということ自体よくわかっていなかったし、勝敗というものの意味もよくわかっていませんでしたので。去年、初めてその意味がわかるようになって、皆と一緒に一生懸命応援したのに、自分の組が負けてしまったものだから、それで昇平は怒ったのでした。「勝負は勝つことも負けることもある。だから、負けても次があると考えて、怒りすぎないこと」ということを教えるにしても、本当に「勝った」経験もさせておかないと、当人には納得できなかっただろうと思うのです。
 白組の優勝がわかった瞬間、わっとわきたつ白組の児童席の中で、昇平がかたわらにいた介助の西尾先生にしがみついて喜んでいるのが見えました。

 運動会が終了したのは12時40分頃。その後は給食があるので、私たち保護者は先に帰りました。昇平たち5.6年生は後片付けまでやってきたので、結局帰宅は4時近くになりましたが、本当に最後の最後まで、皆と一緒に運動会をやり遂げてきた昇平でした。帰宅してから、みんなとがんばっていたことをたくさん誉めたら、とても嬉しそうな顔をしていました。

060528_0926

※写真は鼓笛パレードで鍵盤ハーモニカを演奏する昇平。後ろに少し離れて見えるのが昇平。

[06/06/07(水) 18:52] 学校 発達障害

[表紙][2006年リスト][もどる][すすむ]